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音物語

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【音物語10周年記念連載・第1章】

月1回の全力疾走と、突然の暗転。僕たちが「絶望」のフチに立った日

おかげさまで、音物語は今年で活動10周年という大きな節目を迎えることができました。いつも温かく応援してくれるファミリーのみなさん、そしてこれまで出逢ってくれたすべての人に、心からの感謝を込めて。

今日から数回に分けて、僕たちの泥臭くも愛おしい「10年間の軌跡」を、当時の写真とともに振り返っていきたいと思います。

今でこそ、たくさんの方の実話をもとにした物語を届けている僕たちですが、その始まりは、今とはまったく違うカタチでした。

1. 始まりは3人。狂気とも言える「月1新作」の1年目

音物語が産声をあげたとき、メンバーは今の構成ではなく、僕を含めた3人でした。実績も知名度も、おまけに予算だって何もない。あるのはただ一つ、「届けたい音楽がある」という、溢れんばかりの情熱だけ。

そんな僕たちが最初の1年間、自分たちに課したルール。それは今思えば、少し狂気じみた、とんでもなくハードな挑戦でした。

当時の物語は、今のような「実話」ではなく、ファンタジーの冒険譚でした。豚の「ブータ」とライオンの「キラン」というキャラクターが、愛を探しに行ったり、希望を探しに行ったり……。毎回テーマを1つ決めて、がむしゃらに物語と音楽を紡いでいました。

「毎月1回、必ずどこかで公演を行うこと」 「毎回、完全新作の物語を作ること」 「そしてその場所のために、新曲を1曲書き下ろすこと」

カフェや農園など、ありがたいご縁をいただいた場所に機材を機用よく持ち込んでは、毎月が命がけの真剣勝負。

「とにかく必死だったけれど、今思えば最高に愛おしい時間」

ナゴヤポップアップアーティストのオーディションに挑んだときのあの震えるような緊張感や、至近距離でお客さんの笑顔に触れ、「あぁ、僕たちの音楽、ちゃんと届いてる!」と暗闇の中に光を見つけたあの瞬間の感動は、今でも僕の原点として胸に深く刻まれています。

2. 仲間との出逢い。「音楽×絵」の魔法で進化した世界

そんな風に全力疾走を続けていく中で、僕たちの想いに共鳴してくれる仲間が、1人、2人、3人と増えていきました。

気づけば、メンバーは6人体制に。 そう、ここで今のメンバーであるミオさんも、音物語に合流してくれたんです!

仲間が増えたことで、音物語のステージは劇的な進化を遂げました。 絵描きさんが加わり、「歌を歌いながら、そのバックでリアルタイムに1枚の絵が出来上がっていく」という、唯一無二のライブペイントスタイルが誕生したのです。

ブータとキランが冒険する物語のワンシーンが、音楽とともに目の前で鮮やかに描き出されていく。その魔法のような瞬間に、会場全体が息を呑み、一つになる。僕たちの表現したい世界は、一気に何倍にも広がっていきました。

3. 赤ハットとオーバーオールで、憧れの舞台へ!

活動も3年目、4年目と進むにつれ、ありがたいことに活動の輪は地域を超えて広がっていきました。

街のお祭り、イベント、小さなお店。 どこに呼ばれても、僕たちはあのトレードマークの「赤ハットとオーバーオール」姿で、全力の笑顔と音楽を届けに飛び回りました。

名古屋城の青空の下でのステージや、覚王山にある歴史的な建物・揚輝荘(ようきそう)での厳かな演奏。場所が変わっても、僕たちのやることはただ一つ。目の前の人の心を豊かにすること。

ファミリーのみんなが作ってくれた、たくさんのメッセージがびっしり書かれた「初めてのオリジナルタオル」をみんなで掲げたとき、「音楽を続けてきて、本当に本当によかった」と、胸の奥がじんわりと熱くなるような、最高の幸福感に包まれていました。

このまま、もっとたくさんの人へ、もっと広い世界へ、この音物語を届けていくんだ。 誰もがそう信じて、未来だけを見て走っていました。

あの「大打撃」がやってくるまでは――。

4. 突然の暗転。そして「もうやめよう」と思ったあの日

2020年。世界を一変させた、新型コロナウイルスの到来。

人が集まること、声を出すこと、音楽を楽しむこと、そのすべてが「悪」とされてしまったかのような日々。 音物語へのオファーや、僕たちが何ヶ月もかけて企画していた大切な公演は、文字通り「すべて」キャンセルになりました。

スケジュール帳から、予定が一つ、また一つと消えていき、最後には真っ白になった。 それと同時に、僕の心の中にあった情熱の炎も、行き場を失って急激に冷えていきました。

綺麗な言葉で飾り立てるつもりはありません。 これが、当時の僕の本当の本音です。

「もう、音物語はやめようかな……」

今まで積み上げてきた場所も、機会も、一瞬ですべて奪われて、この先続けていく自信なんて、当時の僕にはこれっぽっちも残っていませんでした。

暗闇の中で立ち止まり、ギターを持つ力すら失いかけていた僕たち。 しかし、この「最悪の絶望」こそが、現在の音物語へと繋がる【奇跡の第2章】のプロローグになるとは、この時の僕はまだ、知る由もなかったのです。

(第2章へ続く)